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Channel: 好きな俳優、今日の一枚 
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壁の向こう側

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東ドイツが東ドイツだったころを知っている世代ですが、私が育ったころはすでに共産主義に夢を託せるような時代ではありませんでした。
鉄のカーテンの向こうも、ベルリンの壁の向こうも、弾圧と粛清の渦巻く真っ暗な世界・・・。

というイメージも、それはそれで極端な偏見。
(スパイ小説大好き)
カーテンや壁の向こう側でも人々は生きて暮らしていたわけで。

とはいえ、やっぱり秘密警察が存在する社会というのは、生きていくのがなかなかしんどい。

タイトルから、東から西に亡命した女性の話かと誤解してしまっていたんですが、東の中での移動でした。

「東ベルリンから来た女」(2012年)

オフィシャルサイトは ここ。


1980年、東ドイツの地方の病院。
ベルリンの大病院から左遷されてやってきた、医師のバルバラ(ニーナ・ホス)。

無愛想で無口でつっけんどんで頑なです。表情の通り。
同僚のアンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)は、貧弱な医療設備の中で工夫を凝らして誠実に患者の治療にあたる優秀な医師で。

自ら孤立を選ぶバルバラにも、真摯な態度で接しているが。

西側への移住申請を却下されて左遷され、シュタージ(秘密警察)の監視を受けているバルバラは、猜疑心のカタマリである。
実は、バルバラは。

西側に暮らす恋人ヨルク(マルク・ヴァシュケ)と秘密の逢瀬を重ねつつ、彼の手引きで東からの脱出に向けて工作中。


しかし、急患として運び込まれた少女ステラ(ヤスナ・フリッツィ・バウアー)の治療に力をつくし。

頭部外傷の少年の経過を気にかけ。

真面目なアンドレを接するうちに。

バルバラの心に変化が。

・・・って、愛想なしのままなので表情からはよくわからないのですが。
そして彼女は、厳しい決断を迫られる・・・。

シュタージのシュッツ(ライナー・ボック)が、この人も終始無表情ながら、妙に味のある人でした。

「善き人のためのソナタ」(2006年)
のウルリッヒ・ミューエを思い出しました。
壁の向こう側の現実が、断片ながらもリアルな印象で感じられます。

饒舌さとは無縁の、ドイツ映画らしい描写の作品でした。
ベルリン映画祭では銀熊賞を受賞、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。
観賞しながら、ヨーロッパ映画っていいなあ、とか改めて思ったりしたんでした。

(最近、北欧&ドイツミステリーを乱読中です)
(フォン・シーラッハの短編あたりと似たような味わいが)

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